40代50代のための面接ガイドロケ

 今日はいよいよロケ。「40代お50代のための面接ガイド」という販売もののビデオの撮影なのだが、メインのADは先輩の岡田さんである。ただ、今日のロケは撮影項目がかなり多く慌ただしいものになることが予想されたので、僕が今回のロケのみ手伝うことになったのである。というと、頼まれてロケに行っているように感じるかもしれないが、実は僕が自ら志願してロケのスタッフに加えてもらったのである。先週の木曜日に製作プロデューサーの遠藤さんから今日のロケの話を聞き、もしもヒマだったら来てみれば?と言われていたのである。ディレクターは高野さんという僕はまだ担当したことのない人で、今回は役者が6人出演して、全てドラマ仕立てで撮影を行うとのことだった。うちの会社では役者をたくさん使うロケというのはあまりない。そこでこういう機会に多くの役者を使っての撮影の進め方を学ぶため、そして高野さんがどういう演出をするのか見せてもらうために、遠藤さんにお願いしてロケのスタッフに加えてもらったのである。
 昨日は突然ロケ場所が変更するというトラブルもあったが、なんとか代わりの場所を見つけることができた。8:00ごろ茅場町に到着。コンビニに寄って朝食を買い、会社で食べる。食べ終わるとすぐに技術部に行き、カメラマンの菅さんと撮影場所についての話をする。そしてすぐに菅さんと一緒に撮影場所を見に行く。茅場町第2別館6階のフロアに行き、扉を開けた瞬間「ああ、これまずいよ」と菅さんは言った。部屋が中途半端な広さで、壁が汚れていたこともあり、撮影はかなり難しいとのことだった。とりあえず建物を出て会社に戻っている途中、ディレクターの高野さんが現れた。そこで一緒に第2別館6階に行き、部屋の様子を見てもらう。すると高野さんもやはりこれは厳しいということだった。そこで3人で話し合った結果、第2別館1階の会議室を見てみようということになった。急いで鍵を借りてきて中に入る。すると高野さんは「よし、ここにしよう」と一発即決。そこで会社に戻り、荷物をとってくる。途中で会った岡田さん(今回の作品のメインAD)と一緒に会議室に行く。カメラマンとカメアシも荷物を持って会議室に来る。それから会議室の物を全て外に運び出し、あたかも面接会場のように部屋を作り替えていく。机とイスを外に運び出し、カーテンをはずして窓はブラインドだけにする。壁のはげた場所をホワイトで塗りつぶし、机とイスの汚れをきれいに拭き取る。そうこうしている間に販売プロデューサーの橋本さんと製作プロデューサーの遠藤さんが現れた。続いて出演してもらう役者も到着。全ての準備が整ったところで撮影開始。まずは屋外の撮影から。面接を受ける中年がビルに入っていくシーンを撮影。続いてオフィス街を歩いているシーンを撮影する。屋外での撮影が終わったところで部屋に戻り、すぐさま撮影準備にとりかかる。
 これから後はずーっと室内での面接風景の撮影。まずはイメージショット。正しい座り方、間違った座り方を撮影する。実際に撮影を行う場所にイスを置き、そこに座ってカメラ位置を微妙に決めていく。そして準備ができたところで役者に入ってもらい、シーンを撮影する。ロケ前にプロデューサーの遠藤さんから「高野はロボットのような演出をするよ」と言われてたのだが、今日になってやっとその意味がわかった。1カット1カットものすごいスピードで撮影していき、全ての物事をすごくすばやくこなしていく。さらにすごく細かいところを微妙に直していく。例えば役者の髪の毛が1mmほどずれていたらそれを直すように指示をする。ネクタイがちょっとでも曲がっていたらそれも直すように指示する。本来ならばそういうことはADの僕が先に気づいて直すべきなのだが、僕自身の技量が足りないため、高野さんが要求するレベルまで気をきかせることはできなかった。しかしそんなことを言っては元も子もないので、自分で気づく範囲は急いでやり、それでも指示されるところは素早く処理していくようにする。今日は終始そういった感じで撮影が進んでいった。午前中は同録(撮影時の音声を収録すること。セリフや環境音など)はなしだったので、スムーズに撮影は進んでいく。12:40ごろに午前中の撮影は終了。
 第2別館に昼食をとれるぐらいの広めの部屋はないので、自分たちのビルの5階にあるプレゼンルームに昼食の用意をする。弁当とお茶を人数分用意して、みんなが来るのを待つ。僕は機材の番をするために撮影現場で一気に昼食をとる。食後にちょっとだけ休んですぐに片づけに入る。弁当の箱を集めてゴミ置き場に持っていき、プレゼンルームを施錠して撮影現場に戻る。現場ではまだ撮影の準備に入っていなかった。13:20から撮影再開ということになっていたので、20分になった瞬間に「それじゃぼちぼち始めましょう」とみんなに声をかける。午後の一発目は主観移動でドアに入っていくシーン。ドアの外にフォーカスドリー(レールの上に台車を載せ、振動なく移動シーンを撮るための特機)のレールを敷き、ドリーの台車の上にミニジブ(小さいクレーンのようなものの)をセットする。このシーンでは、僕はドアの中に入ってディレクターの合図でスムーズにドアを開けなければならない。準備ができたところで役者に入ってもらって撮影を開始する。このカットが終わると一気にレールを片づけ、待合室で面接を待っているシーンを撮影する。このカット以降は全て会議室の中での面接シーンの撮影になる。よい面接のパターン、悪い面接のパターンを幾つか撮っていく。そのまま順調に撮影は進み、19:40に全ての撮影が終了する。役者さんに夕食を用意していたのだが、みんなその場で食事をとらずに、弁当だけ持って去っていった。僕らは現場を一気に片づけて荷物を会社に持って帰る。それからようやく夕食をとる。ロケ終了後、僕はあまりにも腹が減っていたため、弁当を一気に2つも食べてしまった。
 今日のロケはかなり勉強になった。なんといっても役者を6人も使うこと自体初めてだったのだが、それよりも非常に細かい気配り、効率的な撮影の進め方、そして高野さんのカット割り、演出方法など、とりあえずあらゆることが勉強になった。ここ最近、のんびりした生活に慣れきってしまっていたので、久しぶりにロケの全行程が緊張感で包まれたような空気にどっぷり浸れ、かなり新鮮な感じがした。
 夕食後、プロデューサーの遠藤さんから今日のロケでの僕ら(僕とメインADの岡田さん)の動きを見ていて気づいた点を指摘してくれた。僕は会社に入ってから遠藤さんと仕事をする機会が多かったが、ここ1年、遠藤さん演出の作品にはついていなかった。だから久しぶりに見た僕が遠藤さんの目にどう映ったかすごく聞いてみたかった。すると前よりはだいぶ成長したとのことだったが、今でも時々焦ってちょっとした失敗をしているところがあるので、そこを直していくようにとのことだった。それと、高野さんが細かいところに気づく前に、僕が自ら気づいてどんどん手直ししていかなきゃいけないということだった。こういう話はなかなか聞けることではない。普通はロケ中にADの動きで気になるところがあっても、そのことを改めて指摘してくれる人はいない。「こいつは使えない」と判断されれば、その後仕事がまわってこなくなるだけの話である。そういった意味でも、今回ロケ終了後に貴重なアドバイスをくれ、僕を育てようとしてくれている遠藤さんにすごく感謝している。
 22:00すぎに全ての片づけを終え会社を出る。


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