初キュー出し
 今日は10:00から東京テレビセンターでCMのMA。にも関わらず、目が覚めたら既に9:00になっていた。かなり焦った僕はすぐに服を着替えて部屋を出る。新目白通りに出るとすぐにタクシーをつかまえ、「浜町の東京テレビセンターまで。急いで!」と言って急いでもらう。朝の道路は混むので、もしかしたら地下鉄で行った方が早かったのかもしれないが、このときはついついタクシーに飛び乗ってしまった。「急いでいるときはタクシー」というイメージが僕の中にあるのかもしれない。案の定道路は混んでいたが、ドライバーがかなり道に詳しい人だったため、裏道をひたすら通り、なんとか時間までに東京テレビセンターに着くことができた。
 MAルームに入ったのは9:50ごろ。本来なら早めに来てコーヒーを注文したりミキサーと打ち合わせをしたりしなければならないのだが、さすがにその時間はなかった。ディレクターの佐野さん、ナレーターの方は既に来ており、今すぐにでも始められるよう準備が整えられてあった。まだ始まってなかったのはスポンサーが来ていなかったからのようだった。
 とりあえず僕の持っているナレーション原稿をナレーター、ミキサーの方にそれぞれ渡し、簡単な打ち合わせをする。その後しばらくするとスポンサーが部屋に入ってきた。まずはスポンサーと簡単な打ち合わせをする。
 普段なら音入れを先にやり、その後ナレーションをつけるのだが、今日はちょっと変則的に、先にナレーションを録ることにした。ナレーターの方にブースに入ってもらう。ここで佐野さんが僕の近くでボソッとつぶやいた。「今日のキュー出しは隼田くんがやってください」と突然言ってきた。僕は今までキュー出しをやったことがない。そもそもキュー出しは作品全体のタイミングを見ながら最も効果的な場所にナレーションをあてるという大切な作業である。そのため、本来ならばディレクターがやる作業なのである。佐野さんと一緒に仕事をすると、何故か僕にいろんな仕事をやらせてくれる。おそらく僕のためにいろんな勉強をさせてくれているのだろう。そういうせっかくのチャンスを与えてくれてるのだから、やらないともったいない。僕は快く返事をしてキュー出し席に座る。トークバックボタンを押し、ナレーターに話かける。「それでは準備よろしければ一度テストであててみます」。そう言ってミキサーの方に合図を送る。実際に映像を見ながら僕が「ここ!」と思うタイミングでキューボタンを押していく。しかしCM時間は15秒しかないのにナレーションの分量が多すぎるのか、ナレーションが映像から若干はみ出してしまった。すぐさまスポンサーと削れる部分がないかどうか相談する。結果、1カ所を削るということになったので、それをナレーターの方にトークバックで伝える。続いてもう一度テストを行う。するとあとは読むスピードを少し上げてもらえばなんとか収まりそうだったので、次から本番でやってみることにした。しかしどうもうまい具合にナレーションが収まらない。キューを1つなくしたり、読むスピードを調節してもらったりしながらなんとか映像の時間内に収まるように工夫していく。すると4、5回目でなんとかうまくいった。ただ、このときは最後のコメントの際、ナレーターの舌がうまくまわっていなかったので、もう一度同じ調子で読んでもらうようお願いする。するとちょうどうまい具合にまとまった。後ろを振り返って、佐野さんとスポンサーに「これでよいでしょう」と確認すると、2人とも頷いてくれた。佐野さんは終始僕の後ろで何も言わずに見守っててくれた。非常にありがた。
 ナレーション収録が終わると、続いて音入れに入る。ナレーターの方はブースから出てソファーに座り、様子を見ていた。僕はミキサー助手の方にCDのどの部分を使うのか伝える。使う場所の候補が2カ所あったので、2カ所とも映像にあててもらい、スポンサーに聴いてみてもらう。そして「僕としては前者の方がお勧めです」と一言付け加えておく。そう、2パターン用意はしてはいるが、僕としてはそのうち先に言った場所の方がしっくりくると確信していたのである。スポンサーもそれに同意してくれ、結局それが採用される。音入れの作業はそんなにかからなかったので、全ての作業は11:00ごろに終了する。その後VHSに1本コピーしてもらう。それをスポンサーに渡し、みんなで一緒にMA室を出る。
 スポンサーは浜町から地下鉄に乗り込み帰って行った。僕と佐野さんは東京テレビセンターの近くの定食屋で昼食をとり、営団地下鉄人形町駅に向かい、日比谷線に乗って茅場町に戻る。佐野さんはこのまま打ち合わせのため横浜まで行かなければならないらしく、東西線のホームに向かって行った。僕はそのまま会社に向かう。
 会社に着くと、すぐに荷物を片づける。しばらくすると先輩の大津さんが、台本を修正する作業を手伝ってくれと言ってきた。僕が赤の入った台本をもらい、それを見ながらAdobe PageMakerのファイルを直していく。今、大津さんを含むうちの部の多くの人が、このVP制作に携わっている。うちの部でもなかなかない大規模なVPで、その試写が明日行われるということだった。僕は台本を一気に修正して原稿を大津さんに渡す。
 15:00になると、会議室で日光特番の打ち合わせが始まった。今日はチーフプロデューサーの内田さん、プロデューサーの黒崎さん、チーフディレクターの飯島さん、ディレクターの渡辺さん、そして僕の5人で打ち合わせを行う。飯島さんが作成した構成案を元に、今後のロケハン、ロケ、出演者、構成について詳細に打ち合わせていく。打ち合わせの途中、飯島さんが「明日日光に行っていろいろ調べてきてくれない?」と言ってきた。急な話でびっくりしたが、実際今後のスケジュールを考えるとそのぐらいの方がよいような感じがした。とりあえず目的は今市市にある歴史民族博物館の人に日光杉並木についての話を聞いてくること。打ち合わせの途中で僕は一旦その場を離れ、直接博物館の館長さんに電話を入れ、明日会うことができるかどうか聞いてみる。すると明日は都合が悪いがあさってなら大丈夫と言われる。再び打ち合わせの場に戻ってそのことを告げると、取材ディレクターの渡辺さんが「あさってなら俺も行くよ」と言ってくれたので、とりあえず明日の話はなくなり、あさって渡辺さんと一緒に博物館に行くことになった。19:00ごろ打ち合わせが終わり、僕はあさってのための資料を集めていく。
 20:00ごろから精算を始める。そろそろたまった精算を提出しないと大変なことになってしまう。そのため、今日は徹夜覚悟で精算をすることにした。ひたすら精算をやり続けたのだが、結局全て終わらすことはできず、途中で一旦中断して寝ることにした。7:00ごろ、組合室の床の上で寝る。