1年ぶりの帰省
 この時期はちょうど帰省ラッシュ。僕のような仕事をしている人は直前まで帰省のスケジュールが決まらない。ようやく帰省のスケジュールが決まったころというのは、得てして飛行機も新幹線も満席だったりする。僕も今回はそういう感じになりそうな気配はあったのだが、うまい具合に往路の新幹線と復路の飛行機を予約することができた。ただし、どちらも早朝である。しかしこれは仕方がない。昼ごろのちょうどよい時間の便なんていうのは、予約開始直後に全て売り切れてしまうものなのだ。
 そういうわけで、今日は6:00起床。寝たのが1:30だったにも関わらず、とてもスッキリした目覚めだった。のんびり身仕度を整え、帰省の荷物をチェックする。6:30ごろ、重い荷物を持って部屋を出発。歩いて早稲田駅まで行き、東西線に乗って大手町で降りる。ここから歩いて東京駅に向かう。地下1階の改札口から入り、エスカレーターを上って中央通路に出る。すると、ちょうどみやげもの屋がたくさん出ていたので、両親へのおみやげに「東京ばなな」を購入。
 新幹線改札口にたどり着いたとき、時刻は7:00をちょっとまわったところ。新幹線の出発時刻は7:52。まだだいぶ時間があったので、どこかで時間をつぶそうかと思ったが、めんどくさいのでそのまま中に入る。弁当売り場で「牛めし弁当」とお茶を購入。この牛めし弁当はなかなかうまい。もしこの日記を読んでいる方で、東京駅から新幹線に乗る方はぜひ一度食べてみてほしい。
 ホームでのんびりしていると7:30ごろに僕が乗る「のぞみ5号」がホームに入ってきた。そこで、まず荷物をシートに置き、それからキオスクでホットコーヒー、缶コーヒー、雑誌、新聞などを買い込む。出発までシートに座り、一心不乱に読売新聞を読む。出発時刻を過ぎ、新幹線が動き始め、品川を過ぎたあたりで朝食タイム。牛めし弁当を食べ始める。新横浜を過ぎたあたりで食事は終了。今度はキオスクで買った日経新聞を読み始める。その後、ニューズウィーク、アエラを立て続けに読む。そして名古屋あたりで読むものが全てなくなってしまった。そこで、鞄の中からノートを取りだし、新しいWebのデザインをスケッチしていく。この作業は非常に楽しく、そしてけっこう時間をつぶせる作業だった。結局そのまま小倉に着くまでノートにデザインを書き続けていた。
 小倉駅で新幹線を降りた瞬間、大きく深呼吸をしてみた。北九州のにおいがする。土地にはその土地独自の空気のにおいがある。うまく表現できないが、北九州には北九州のにおいがある。そしてそれはとても懐かしい。生まれてから高校卒業までの18年間、毎日身の回りにあった空気のにおいである。北九州に帰ってきた!ということを肌で感じた瞬間だった。
 小倉駅のコインロッカーに荷物をつめこみ、ちょっとした荷物だけ持って小倉の街にくり出す。西小倉駅付近まで歩いていき、高校時代毎日にように行っていたラーメン屋に入る。店の人は僕の顔を見るなり、「お!久しぶりだねぇ」と言ってくれた。覚えてくれていたらしい。ラーメンとチャーハンを注文し、一気に食べてしまう。この見せに来るのは3年ぶりだった。大学時代も帰省したときは必ずこの見せに来てラーメンを食べていた。しかし会社に入ってからは帰省の時期が年末ギリギリだったので、この見せも正月休みに入ってしまうため来ることができなかった。今回はたまたま早めに帰省することができたので、必ずこの店に行こうと思っていたのである。
 久々のラーメンに満足した僕は小倉の街をあてどもなくぶらぶらしてまわる。ラフォーレ原宿・小倉(不思議な名前だけど本当の名前)を見て回っていると、よさげなコートがあったので買おうかと思ったが、冷静に考えてみると東京に戻るとき荷物になるので買うのをやめた。続いてアジア太平洋インポートマートに行ってみる。こういう施設ができているということは前々から知っていたのだが、実際に行くのは今回が初めてである。中に入ってみると、予想通りアジア系のショップが幾つか並んでいた。そしてこれまた予想通り非常に寂しい雰囲気だった。大阪の南港付近にもこういうのがあったような気がしたが、それに比べたらあまりにも寂しいもので、見ていてちょっと悲しい気分になってきた。切ない気持ちのままその場を離れ、今度は駅の南口側をうろつく。
 魚町銀天街を歩いていると、僕が以前、ときどき行っていた靴屋が目に入ってきた。何気なくその店に入って靴を見ていると、これまた何気なく靴を買っていた。荷物になるのに、とは思ったが、知らない間にあまり気にせず買っていた。
 小倉駅に戻り、コインロッカーから荷物を出してJR鹿児島本線に乗る。驚いたのは、小倉駅が自動改札になっていたこと。いよいよJR九州にも自動改札が導入されたらしい。知らない間に地元もどんどん変わっていく。戸畑駅で降り、いつものように若戸渡船の乗り場に行く。ここだけは時間が止まったままだった。戸畑駅から渡場までの道は何一つ変わっているところはなく、そして渡場自体も全く変わっていなかった。船が到着して桟橋の方に向かう。すると、船がいつもと違うことに気づく。なんと、新型の船が導入されていたのである。船室にはエアコンが設置されており、さらに船首部分にはテレビまであった。この先永遠に変わることがないと思われていたこの船にも変化の波が押し寄せてきていた。かなり驚いたが、あまりうろうろ船内を見て回るのも恥ずかしかったので、その場で平静を装ってみる。
 船を降り、市営バスに乗り換え、最寄りのバス停、若松警察署前で降りる。実家に戻ると母が夕食の準備をしていた。僕がリビングでくつろいでいると、父親もリビングに移動してきて3人で再会を喜び合う。そのまま夕食を食べつつ、いろんな話をしている間に時間は過ぎていった。やはり実家はくつろげる。ただ、このときふと1つのことが頭をよぎった。僕がこの実家に戻るというのは、僕の気分としては「ハレ」にあたることになっている。要するに特別な出来事なのである。僕の気分的には東京での生活が日常になってしまっていた。7年間も実家から離れて生活していると、もはや実家は戻るべきところではなく、たまに行って懐かしむところになっていた。ちょっと寂しい感じもしたが、多かれ少なかれ、いずれはこうなっていったのだろう。これが今回帰省してみて最初に感じた大きな発見だった。