「21時間ロケ」というタイトルだが、これまでもっと長い時間ロケをやったこともあるので、今さら取り立てて「21時間」などと書かなくてもいいのだが、これぐらい時間のかかったロケは久しぶりなのと、初めてこの日記を見る人たちにとって「こういう日もあるよ」ということをお知らせする意味でも今回はこのタイトルにしてみた。
今日のロケの出発時刻は6:00。けっこう早い。気合いを入れて4:30に起きる。素早く身仕度を整え部屋を出る。スタッフルームに着いたのは5:15ごろだった。ロケの荷物を最終的にチェックし、取り出しやすいようにバッグに詰めていく。
6:00ちょうど、スタッフルームを出発。そのまま技術の会社に寄り、機材を載せ、カメラマン、ビデオエンジニアと一緒にロケ地に向けて出発する。
今日のロケ地は先日のロケでも行った、千葉県佐倉市にある水中生物の養殖場のようなところ。ここで世界各国のナマズの撮影を行う。7:00ちょっと過ぎに最初の撮影ポイント、東関東自動車道佐倉インターチェンジの料金所に到着する。ここでキャスターが車に乗って料金所から出てくるシーンを撮影する。7:30ごろキャスターが到着。すぐに衣装に着替えてもらう。僕らは撮影ポイントを決め、キャスターの準備が整うのを待つ。しばらくすると着替え終わったキャスターが車から出てくる。キャスターにロケ車の助手席に乗ってもらい、いよいよ撮影開始。料金所の脇から出発して、さも料金所から出てきたような雰囲気で撮影する。取り終わったところで次の撮影ポイントに移動。今度は街の途中にある「佐倉→」という看板のところを通過する様子を撮影する。これもすんなり終わり、いよいよ目的の養殖場へと移動する。
8:30、佐倉の養殖場に到着。まずはここで担当者に挨拶をして、今日の撮影内容について簡単に説明する。ただ、ここでの撮影は午後から。それまでに屋外のシーンを撮影してしまう。養殖場からちょっと離れた場所にある田んぼで、再現シーンを撮影する。ディレクターが「ここ!」という場所を決めると、僕はすぐにその田んぼの持ち主らしき人を探し、撮影の許可を得る。こういった撮影の際、えてして現地の人たちは協力的である。今回も例に漏れず、かなり様々なアドバイスをもらうことができた。
田んぼの畦道を歩くキャスターの様子、畦道を歩いているとナマズを発見する様子、などなど、台本に沿って再現シーンを撮り進めていく。キャスター中心の部分を取り終わったところで、いよいよ実際のナマズを用いての撮影を始める。
持ってきた3匹のナマズのうち2匹を使用し、畦道で暴れているシーンを撮る。ということは、畦道にナマズを置かなければならない。もし暴れて田んぼに落ちてしまったら、そのまま泳いで行って二度と捕まえることなどできない。そういった心配をよそに、ディレクターが「じゃあ、ナマズを出して」と何事もないかのように言ってくる。とりあえず持ってきた袋の中に手を突っ込み、ナマズを捕まえようと試みる。ところがナマズは体がヌルヌルしており、全くつかむことができない。仕方ないので網状のものを体に巻き付け、手が滑らないようにしてようやく袋から出すことに成功する。畦道にナマズを置くと、最初はムチャクチャ暴れていたのだが、徐々に元気がなくなって動かなくなってしまった。このシーンではナマズが大暴れしてないといけないので、途中でつついたり、胴体をつかんだりしながら、なんとか暴れている様子を撮影する。ところがこういう時に限ってテイクが増えていく。何度も撮影していると、徐々に元気がなくなってきて、しまいには全く動かなくなってしまった。時々水の中に戻したりしながら、なんとか生きながらえさえ、とりあえず意図通りの撮影を済ます。
田んぼでの撮影が終了すると、次は公園でのシーン。キャスターが公園で魚の図鑑を見ているシーンを撮影する。これは簡単に終了。続いて養殖場の裏にある川で、キャスターが水中の様子を探るシーンを撮影する。ここで撮影をしていると、途中で大変な事になった。今日の天気予報は「曇りのち晴れ」である。降水確率は10〜20%。絶対に雨は降らないと思っていた。ところが川での撮影が始まると、遠くの空から徐々に真っ黒な雲が迫ってきた。そしてしばらくすると雷鳴らしきものが聞こえ始めた。最初は撮影現場が成田空港に近いことから、飛行機の音かと思っていた。しかし次第にその音が雷であることが疑いようもないぐらい、大きな音を立て始めた。雨が降る前になんとか外での撮影を終わらせたい。そう思って急いで撮影を進めていく。川での撮影もあと3カットというところで、とうとう来た!周囲の静寂を
切り裂く大音響と閃光とともに、大粒の雨が一気に降り始めた。「せめてあと1カットだけでも!」と、がんばって撮影を続けていたのだが、雷がすぐ近くに落ち、豪雨でちょっと前も見えない状態になり、撮影なんてやっている場合ではなくなった。そこに追い打ちをかけるように、突然ヘビが現れた。僕らが撮影をやっている場所めがけて水面をすごいスピードではってくる。そして僕らの周囲を俳諧して、そのまま再び水面に去っていった。こんな極限状態では撮影なんてやってられない。僕はこのあまりの状態に、思わず爆笑してしまいそうになってしまった。僕の精神状態もかなり怪しくなっていたらしい。
とりあえず撮影は中断。機材を持って車に向かって走る。途中、あせった僕は川の中に片足が落ちてしまった。右肩にはCCDカメラと10インチモニタ、左肩にはBETACAMのポータブルデッキを担いでいる僕は、間違ってもそのまま川に落ちたりはできない。ぬかるむ川底から足を引っこ抜き、ロケ車まで走って行く。車に機材を積み、助手席に乗り込む。この時点で僕の服で濡れていないところは全くなかった。川に落ちたのと大して変わらないような状態だった。とりあえず川での撮影は雨が止むのを待ち、養殖場で室内の撮影を先にやらせてもらうことにした。
5月とは言え、佐倉はまだ若干寒さが残っている。そんな中、体中を濡れた服で覆われている僕は今にも凍死しそうなぐらい寒かった。とりあえず上着を脱ぎ、Tシャツも脱ぎ、体が乾くのを待つ。Tシャツを絞ると、まるで雑巾のように大量の水が出てきた。肩にタオルを巻き、その上から濡れたTシャツを着る。これで少しは体が楽になった。
外は依然として豪雨なので、とりあえず室内での撮影を先にやってしまう。まずは様々なナマズの様子を撮影。現場の担当者にキャスターが質問したり、珍しいナマズを見て驚いているシーンを撮っていく。一通りナマズの種類説明の映像が取り終わったところで、一度外に出てみる。するとさっきまでの雨がウソのように、外には日差しが出てきていた。すぐに川に戻り、続きの撮影を始める。さっきの豪雨で水かさが上がり、撮影していた場所が水没してしまったが、近くの場所でなんとかごまかしながら撮影を済ませてしまう。
再び養殖場に戻り、残った部分の撮影を一気に済ませてしまう。撮影が終了したのは19:30だった。機材を撤収していると、またもや大粒の雨が降り始めた。急いで機材を車に積み込み、養殖場を後にする。もしやスタッフの誰かが強烈な雨男なのかもしれない。いや、僕ではない。僕は「曇り男」である。僕がいる現場では「ピーカン」になることは少ない。本当は撮影を中止したいのだが、雨が降ってないから撮影は可能という微妙な状態にしてしまうのである。それもそれで困りものではある。
佐倉で夕食を済ませ、東京に戻る。技術の会社に到着したのは22:00ごろ。ここから物撮りを始める。まずは立体物から。撮影の小道具として使用したDVのテープ、本の表紙などを撮影する。続いて先日僕が作った風車(かざぐるま)。これが必殺仕事人のように黒バックで飛んでくる様子を撮影する。どうやって撮るのかというと、カポックに黒のウールペーパーを貼り付け、そこの表面に風車を貼り付ける。そして風車の真ん中に針を突き刺し、裏側から回転させられるようにしておく。この状態で風車を回転させながら、カメラを動かして、さも風車が飛んできているような雰囲気の映像を撮影する。この撮影はかなり難しく、ここだけでかなり時間がかかってしまった。風車部分の撮影が終了したのは1:00ごろだった。
続いて撮影したのはナマズとりの仕掛け。これまたかなり大きなものなので、撮影はかなり大変だった。ただ、これが終わってしまうと後は本の中身だけなので、撮影はスムーズに進んでいった。結局全ての撮影が終了したのは3:00ごろだった。
技術会社を出て、収録したテープをテレビ局の前の編集スタジオに持っていき、ワークおこしを発注する。テープを預けてしまうとようやくひと安心。スタッフルームに戻り、ロケ道具を全て片づける。
全ての作業が終了したのは4:30ごろだった。スタッフルームを出て、タクシーで帰宅する。