歌舞伎町
 今朝8:00ごろ、北九州の実家にいる母親からの電話で目が覚める。「あんた大丈夫やったね?」といきなり言われる。わけがわからなかったので、「何が?」と聞いてみると「とりあえずテレビを見てみなさい。そうしたらわかるから。でも家にいるんだったら大丈夫やね。よかったよかった」と言い電話を切られた。
 まだよく事態を把握できていない僕はとりあえずテレビをつけてみる。すると、歌舞伎町のビルで爆発事故が起こったというニュースが流れていた。テレビに映し出されていた場所は、僕がよく知ってるところだった。ちょうどコマ劇場の角のマクドナルドから、靖国通りに向かってちょっと歩いた場所にあるビルだった。昔はよく歌舞伎町に飲みに行っていたので(飲みに行っただけで遊びに行っていたのとは違う)、非常に見慣れた光景だった。さらに今はこの近辺を歩いて通過することが非常に多いため、かなりビックリだった。事情を知っている母親は、もしかしたら僕が現場近くを歩いていて、爆発に巻き込まれたんじゃないかと思っていたのだろう。そうでなく、見せに客として行っていたと思われていたらかなり切ないものがある。せめて3階の麻雀屋ならいいのだが、4階の客と思われてしまうとつらいものがある。
 何はともあれ、素早く身仕度を整え部屋を出る。9:30ごろスタッフルームに到着する。今日は歌舞伎町の影響もあり、警察官が異様に多かった。空を見ると各社のへりが「バラバラ」音を立てながら飛び回っていた。そんな中、いつものように仕事を始める。今日でロケ場所をほとんど仕込んでしまわなければならない。とりあえず電話できるところからドンドン電話していく。ところがなかなか取材を了承してくれるところが現れない。そうは行っても取材先が決まらないとロケにも出られないため、可能性がありそうなところに片っ端から電話をかけまくっていく。
 16:00ごろ、とりあえず一番やっかいな実験をやってくれる取材先が現れた。とは言ってもここでホッとしてるわけにはいかない。実験をやるためには、その実験で使用する材料を集めなければならない。再び電話をしまくり、材料を持っている人を探し出し、使わせてもらえるようお願いしていく。
 18:00ごろ、ディレクターが構成を書き上げ、テレビ局に打ち合わせに行く。その間、僕はスタッフルームに残りロケの仕込みを続ける。21:00ごろ、都内の沖縄料理屋を仕込むため、数カ所に電話をしてみる。その中で最もよさそうなところを選び出してみる。そこは歌舞伎町に店を構えていた。どうせなら一度どういう店なのか見てみたいと思い、直接店に行ってみることにした。
 店はコマ劇場の搬入口の近く。ということは事故現場の近くでもある。ついでだから事故現場を見てみることにした。今日は土曜日の夜。ただでさえ人が多い時間帯ではあるのだが、事故現場の前は常軌を逸した人混みだった。まるで朝の満員電車、夏の花火大会の会場のような人混みだった。よく見てみると靖国通りには各テレビ局の中継車が停まり、空にはまだへりがうろうろしていた。地上を見てみると、スチール、ムービーの各カメラマン、アシスタントなどなど、メディアの人間が溢れるほどいた。もしかしたら知り合いに会うかもしれないと思い、姿勢を低くして頭を下げたままその場を通り過ぎる。
 そんなこんなで店の前に到着。シーイングは最悪だった。店の隣は裏ビデオ屋とキャバクラ。店の向かいは裏ビデオ屋が2軒並んでいる。ちょっとハスに構えて店の正面を見てみると、手前は焼鳥屋が見える。だが、角度がもうちょっと急になると、さらにその奥にヘルスが見えた。非常に撮影しづらい場所ではあったが、撮りようによってはうまく撮れそうな場所でもあった。とりあえず店に入り、事情を話して店内を一通り見せてもらう。2階の座敷に行き、写真を撮っていると、多くの客から声をかけられた。「まぁまぁ兄ちゃん、座りぃな」「どこのテレビ?」「俺ってかっこいいでしょ」などなど、非常に陽気なみなさんだった。僕も今日は次の予定がなかったため、しばらくその場に座り込んで客と雑談をして過ごす。その中で、東京出身の人であるにも関わらず沖縄にはまりこみ、店内で三線の演奏を披露している人がいた。なかなか興味深い人だったので、しばらくその人と話をする。店の出際に、彼の連絡先を教えてもらう。このような、偶発的な人との出会いというのは非常に嬉しいものである。
 なんだかんだで、22:30ごろ店を出て、そのまま帰路につく。