街角散歩

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2009年12月13日

空間の表現力

空間の表現力

今日は一眼レフデジカメの話。いろんなメーカーから様々な価格帯の一眼レフデジカメが発売されたことで一眼レフカメラの裾野が広がり、これまで一眼レフカメラに興味がなかった人たちも購入するようになっているようです。実際僕が写真を撮りに出かけると、かなりの確率で一眼レフデジカメを持った人たちと遭遇します。中には使いこなせず、結局ケータイカメラやコンパクトデジカメに戻る人もいるかと思いますが、一方でそこから一眼レフカメラの魅力にはまっていく人もいます。その「はまっていく人たち」の「はまる」対象は2つに大別されるのではないかと思います。一つは「写真」そしてもう一つは「カメラ」。

メカとしてのカメラにはまる人は多く、会社で一眼レフカメラを持っている人と話をすると、だいたいカメラやレンズの話になることが多いです。かくいう僕はまごうことなく前者の「写真」がメイン。僕はキヤノンのEOS 5Dというカメラを使っていますが、率直な話、僕がイメージする写真を撮れるのであればどんなカメラでもよくて、別にキヤノンのカメラにこだわっているわけではありません。ただ、既にキヤノンのレンズをそれなりに揃えてしまったので、他のカメラシステムに乗り換えにくくなっているだけなのです。ということでこのブログでは写真やその状況の話は書いても、カメラ自体の話はほとんど書きません。なぜなら僕にとってカメラとは僕自身のイメージを具現化するための道具であって、それ自体が目的ではないからなのです。

なのになぜ今日に限ってカメラの話をくどくど書いているかというと、実は新しいカメラを買ったので、その話をするための前フリをしたかったからなのです。と言いつつも新しいカメラの話の前に、これまで僕が使ったカメラの話。

・キヤノンEOS D30(売却済み:30Dじゃありません)
・キヤノンEOS 20D(売却済み)
・キヤノンEOS 5D(現行)
・エプソンR-D1s(売却済み)

見てわかる通り、僕の写真はほぼキヤノンのカメラで撮ったものです。そもそも2004年に元々使っていたコンパクトデジカメが壊れたのをきっかけに、せっかくだから一眼レフカメラを買おうと思ってたまたま手にしたのがキヤノンだったのです。というよりもそのとき中古で最も安かったのがキヤノンのEOS D30だったので、特に何も考えずに買っただけなのです。半年ほどエプソンのレンジファインダーカメラR-D1sを使っていた時期がありますが、訳あって手放してしまいました。しかしこのとき初めてキヤノン以外のカメラをじっくり使う機会があったわけですが、そこで初めてカメラによる写りの違いに気づいたのです。

キヤノンのカメラの写りはなかなかのもので、どんな環境であっても平均以上の写真を撮れます。しかしR-D1sというカメラはクセがあって使い勝手がそれほどよくないのですが、それでも時々「ハッ」とするような写りになることがありました。R-D1sを手放したあとは再びキヤノン一本に戻ったのですが、なんとなく自分の写真表現がパターン化されてきた感じがしはじめたのです。自分がイメージする世界があって、でも今のカメラだとそのイメージが実現できない。RAWで撮ってPCで現像するときに細かく調整したりはするのですが、それでも微妙にイメージと違う。そんなことがあって、もっともっと自分のイメージに近い写真を撮るにはどうしたらいいか考えた結果、今回カメラを新たに買うことにしたのです。

ということで前フリが異様に長くなってしまいましたが、先日新しいカメラを買いました。新たに購入したのは「CONTAX N DIGITAL」というカメラです。最近カメラに興味を持ち始めた方の中には「コンタックス」を知らない方も多いかもしれません。それもそのはず、コンタックスは京セラが作っていたカメラのブランド名で、その京セラは2005年にカメラ事業から撤退したのです。なのでコンタックスはもはや現行機種が存在しないブランドなのです。ちなみにこのN DIGITALというカメラは2002年に発売されたもので、世界初の「フルサイズセンサー」を搭載したデジタル一眼レフデジカメです。フルサイズセンターというとキヤノンの1Ds MarkIIIや5D、またはニコンのD3XやD700などが有名ですが、そのどれよりも早くセンサーをフルサイズ化したのがN DIGITALなのです。

と言ってもセンサーがフルサイズだろうがAPS-Cだろうが本質的にはあまり関係なく、重要なのは「写り」の部分。実はかつて僕は一度だけこのカメラを触ってみたことがあるのです。2004年ごろデジタル一眼レフカメラに興味を持ち始めていて、ヨドバシカメラでいろんなメーカーの実物を触ってみては吟味を重ねていた時期がありました。キヤノンやニコンを中心に触ってみつつ、その流れで触ってみたのがコンタックスN DIGITALだったのです。キヤノンやニコンのカメラを使ってみたときの感想が「へー、キレイに撮れるなー」という感じだったのですが、N DIGITALの場合は「なんだこれは!」という驚きがありました。被写体が浮き上がるような立体感、ピントが合ったところのクッキリ感、幻想的なまでのボケ、などなど、とにかく衝撃的な「写り」だったのです。しかしながら当時のN DIGITALの値段は80万円ほど。絶対に買えない値段でした。しかし、そのときの衝撃は今になっても忘れることができず、いつしかN DIGITALで写真を撮ってみたいと思い続けていたのです。

そのときは結局、中古で一番安いキヤノンのカメラを買って、その後ずーっとキヤノンのシステムのまま今まで写真を撮り続けてきたのですが、前述のような訳もあってテイストの違うカメラを探すようになったのです。となると思い浮かぶのは衝撃的な「写り」を見せてくれたN DIGITALです。しかしながらN DIGITALは2002年に発売された古いカメラ。しかも2005年には発売元の京セラ自体がカメラ事業から撤退してしまったこともあり、通常の一次流通市場に商品が存在しないのです。となると中古で探すしか方法がないのですが、なぜかこの機種、中古市場にほとんど出回っていないのです。元々の価格が80万円という、いわゆる高級機として売り出していたこともあり出荷台数がそもそも少ないらしく、一説によると世界で3000〜5000台しか存在しないらしいのです。そんなわけでしばらくいろんな中古カメラ屋やヤフオクなどを探し回ったのですが、探索は思った以上に困難を極めてしまいました。で、結局自分で見つけることはできず、最終的には人づてにゲットするにいたりました。

恐ろしく長い前フリになりましたが、そういうわけでこの週末はCONTAX N DIGITAL片手に写真を撮りに出かけました。新しいカメラのシェイクダウンということもあり、カメラの限界値を知るため、各種パラメータをいじりながらいろんな状況下で写真を撮り回ってみました。そんな中の一枚が今日アップした写真。新宿・東京都庁の展望台から撮影した日没直後の街並みです。

最近の一眼レフデジカメは高感度でノイズが出にくいことを一つのウリにしています。となると暗い場所でも手持ちで写真を撮れる機会が増えるわけで、それ自体は嬉しい話です。しかしながら、その代償みたいなものもあって、ノイズを減らすためにカメラ本体で画像処理が行われるため、処理が入れば入るだけ「目でみた自然な感じ」みたいなものが減っていくのです。CONTAX N DIGITALは古いカメラであることから高感度の処理が苦手です。そもそもISO感度の最高値が400です。ただし下限はISO25と、最近の一眼レフデジカメでは存在しない低感度高画質設定ができます。

ということで高感度が苦手なN DIGITALで暗い環境下の写真を撮ってみたわけですが、やはりノイズっぽいものはそれなりに見られるものの、思ったより気になりません。それよりも何よりも「写り」がいつも使ってるキヤノンのカメラと全く違っていました。何というか、これまでの写真では表現しにくかった空間の広がりみたいなものがキレイに表現できているように感じられました。

何はともあれこの写真は新しいカメラのシェイクダウン一枚目。今後、いろんなシチュエーションで撮ってみて、カメラの限界値を見極めた上で、必要に応じてキヤノンとコンタックスのカメラを使い分けながら、自分のイメージする世界を表現していこうと思います。

アップロード日時 : 2009年12月13日 16:02    撮影場所 : [ 新宿区 ]

地図

撮影詳細情報

撮影情報
撮影場所 東京都庁展望台 南西方面
撮影日時 2009年12月12日 16:45
カメラ情報
カメラ CONTAX N DIGITAL
フォーマットサイズ 35mm
ISO感度 100
露出プログラム 絞り優先AE
露出補正 ±0EV
露出時間 1秒
レンズ情報
レンズ Vario-Sonnar T* 24-85mm F3.5-4.5N
焦点距離 29mm
絞り f/3.5

コメント

こんにちは
コーヒーさんにして珍しい内容、しかも長文でしたね。

私も「カメラ」よりも「写真」に軸足がありますが、自分の思った
「写真」を撮りたいので、どうしても「カメラ」の方にも感心が
いってしまいます。

私はコーヒーさんの写真のテイストがすごく好きですが、
同じカメラを買って、まねしてもきっと撮れないだろうなぁって
思っています。
その前に自分のが思った通りの写真ですらなかなか撮れない
私です(^^;)

長らくコンパクトデジタルだけを使って撮っていたのですが、
先月PENTAX K-7を買いましたが、やっぱり「カメラ」だけ
ではない、何かが必要ですね。

これからも楽しみにしています

投稿者 ちびた : 2009年12月14日 13:24


>ちびたさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
何も考えずに頭に浮かんだことをそのまま書いてたら、激しく長い文章になってしまいました。僕の場合、これまでカメラの性能を上回るイメージを実現するため、撮影はそこそこに後処理のRAW現像に力を入れてきました。でも、今回の新しいカメラは撮ったままの素の状態でもそれなりの味わいが感じられるようになったため、このカメラの場合は撮影から後処理のワークフローが微妙に変わりそうな気配します。PentaxのK-7、いいカメラですね。どんな過酷な状況でも耐えてくれそうなイメージがあります。普段、そんな過酷な状況はそれほどないかもしれないですが、時として大雨に見舞われたりすることもありますので、そんなとき真価を発揮してくれそうですね。何はともあれ、カメラやレンズはあくまでも道具であって、本質的にはアウトプットとしての写真のクオリティの方が重要な気がしますので、今後もご期待に添える写真が撮れるようにがんばります!

投稿者 コーヒー : 2009年12月15日 00:10


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